代表的な依存症として、ここではアルコール依存症について説明していきます。長期に渡り多量のアルコールを摂取することで、飲酒をコントロールできなくなる状態がアルコール依存症です。体内のアルコール濃度が下がることで様々な症状が現れ、その不快感を紛らわせるためにアルコールを摂取し続けます。最初のうちは少量で大丈夫だったものが、習慣的に摂取することによりアルコールの耐性が上がり、飲酒量が増えていきます。そのうち、少量の飲酒では物足りなくなり、精神依存が生まれます。アルコールを摂取している状態が普通になると、アルコールが抜けている状態のときの離脱症状が強くなります。
依存症に陥ると、「少しくらいなら」「今日だけは」と考えてしまい、飲むのはよくないと分かっていてもアルコールに手を出すようになります。本人の意思とは関係なく、脳にアルコールを要求する回路が形成されている状態です。アルコール依存症は抜け出すのが難しい病気です。症状が落ち着いたと感じても、再発する可能性が高いです。最初のうちはイライラ感や落ち着かないなどの軽い症状ですが、アルコール摂取を続けていくうちに、飲んでいない時間に手が震える、眠れなくなる、吐き気、幻覚、寝汗などの離脱症状が出てきます。
アルコールを摂取することで一旦症状は治まりますが、アルコールが抜けると再び症状が出てきて、以前よりも離脱症状の度合いが高くなります。悪化していく離脱症状を落ち着かせるためにさらに大量のアルコールを摂取し、それに伴い離脱症状も悪化していくという悪循環に陥ります。飲酒量が増えることで、「イライラ感」「不安感」「動悸」「息切れ」「集中力の低下」「血圧の上昇」などの症状が強くなり、脳が萎縮する可能性もあります。
アルコール依存症は日常生活に多大な影響を与えます。仕事をしている人は欠勤や遅刻、業務上のトラブルなどが生じます。家庭内においても、飲酒を優先させることによってトラブルが生じやすくなります。別居や離婚、育児放棄に至るケースも多く、暴言や暴力、飲酒運転などの社会問題にもつながる可能性が高いため、早期の発見、治療が求められます。社会的に孤立し、そのストレスから飲酒量が増えていき、治療を受けずにいるとそのまま死に至るまで飲み続ける危険性があります。慢性的で進行性のある病気であり、負の連鎖を止めるためにはアルコールを断つ以外の方法はありません。