アルコール依存症や薬物依存症などの、依存症を専門とする看護師の資格はありません。ただし、2007年から2015年の間は、精神科認定看護師における専攻領域に「薬物・アルコール依存症看護」が存在していました。2015年以降は専攻領域が統合されたため、「精神科領域を専門とする認定看護師」として定義され、精神科認定看護師の資格があれば一定の知識を有していることの証明になります。精神科専門看護師についても同様で、依存症に限った分野は設けられていませんが、リエゾン精神看護の専門知識を有しているため、依存症を含む幅広い範囲の精神疾患への対応が可能であることを証明できます。
依存症治療を専門としている外来や病棟は全国各地にありますが、そのほとんどは精神科クリニックや病院などのカテゴリーに属しています。アルコールやギャンブルなどへの依存については、アディクション・パーソナリティ障害の看護ケアの1つとして捉えるケースが多いようです。
依存症治療に興味があるのなら依存症治療を行っている医療機関へ勤める必要があります。その多くが精神科なので、精神科の勤務経験がある看護師は転職の際に有利です。経験がない場合は、精神科で経験を積んでから転職するのもいい方法です。ただし、依存症治療を行っている病院に転職しても、すぐに該当の科に配属されるとは限りません。なぜなら、依存症治療を行う病棟や外来は他の科と比べると規模が小さいケースが多いからです。
依存症患者は治療意識が低く、看護師への対応に逸脱行為が見られる人が多いです。そのため、ストレスに対して上手に対応できる人の方が向いているでしょう。また、一貫した態度で患者に接し、寄り添う姿勢を持ちながら看護ケアを提供する能力が求められます。
依存症は精神科看護の一部であると捉えられており、依存状態からの回復という難しい側面を持つ分野です。そのため、依存症治療に携わることで自身の成長や社会的視野の広がりを感じることができます。また、患者が回復し、社会復帰していく過程を間近で見ることができるため、それが多くの看護師のやりがいにつながっています。
依存症に対する治療はこれからも研究が進められる分野です。依存症患者に対する看護マニュアルの整備や地域のネットワーク作りなど、課題が多い分野であると同時に、看護師としてのやりがいも大きい仕事です。パーソナリティに問題を抱える患者への対応は難しい場面が多いのも確かですが、興味がある人は積極的にチャレンジしてみましょう。